「土御門誠日が夢をみた話」

原案 : 加賀屋史生 / シナリオ : 岡部雅子

歩人(ナレ)「人里離れたある場所にひっそりと立つ、平安時代の建造物を思わせる小さな神社。
忘れられたように、そこにある神社に訪れるのは昼寝の場所を探す猫だけ」

SE ばたばたと慌ただしい足音

覚弥「千春、千春〜〜!!」
千春「なんだよ、覚弥。朝から騒々しい」
覚弥「軍手がないんだけど、千春の分はあるかい?」
千春「ほら」
覚弥「あっ、ありがと」
千春「だから、夜のうちに出しとけって言っただろう?」
覚弥「ああ、よかった。えーと、あとは誠日の分だね。あれ?……一つ多いけど」
千春「ああ、それはだな。想定したとおりなんだが」

SE ふすまの開く音

誠日「ねえ、朋希から軍手忘れたってメールが!」
覚弥「……ああ……そっか……なるほどね」
千春「ほら、誠日。お前と朋希の分」
誠日「ああ、よかった。もう、朋希ってば、日直だからって早く登校したのはいいけど、忘れ物するなんて……」
千春「朋希らしいな」
覚弥「でも、千春が気がついてくれてよかったよね」
誠日「うん」

SE 足音 近付いてきて

歩人「こら、お前たち。のんびりしてどうした。遅刻するぞ」
誠日「あ、はい、歩人先生」
千春「もう行きます」
覚弥「あーーー!」
歩人「どうした、覚弥」
覚弥「肝心のジャージ! ジャージ忘れたから、部屋から取ってくる!!」

 SE ばたばたと去る足音

千春「……まったく」
歩人「忘れ物には気をつけないとな。今日は課外活動のボランティアがあるのだろう?」
誠日「はい、駅前通りのゴミ拾いをするんです」
歩人「もう今年もそんな季節か」
誠日「今年もって……ずっと続いているんですか?」
歩人「ああ、そうだよ。そういえば、宗克たちもやっていたから、大分前からの恒例行事だね」
誠日「兄貴も? そうだったんだ」

  SE 駆け寄ってくる足音

覚弥「ごめーーん! もってきたよ!」
千春「まずい、もう遅刻だ」
覚弥「いってきまーす!」
誠日「先生、いってきます!」
歩人「ああ、今日も気をつけてな。あと力にも」
千春「わかってます。では、先生行ってまいります」

SE バタバタと去っていく足音

歩人「まったく、いつものことながら、朝は慌ただしいものだな……」


歩人ナレ「だれも知らないこの神社こそ、陰陽師を育成するための寄宿学校である。
未来の陰陽師になるべく、スカウトによって集められた有望な少年たちが、日々訓練を受けていた。
彼らは、普段は普通の子供と同じように学校に通っている。
ただし、自分たちの素性は極秘事項であった」

   SE ふすまを閉める音

歩人「さて、静かなうちに次のカリキュラムのことを考えて……あ。 そういえば、今日は……まあ、よい、どうせ、帰宅すればわかることだからな」